戸田の杜クリニック 院長&スタッフブログ

グリア細胞

平成から令和への時代の移り変わりの今年のゴールデンウイークが間近です。巷は10連休が多いようですね。

こんなに暖かな陽気なのにインフルエンザB型が流行っています。最近のインフルエンザウィルスは寒さと乾燥が嫌いになったやつもいるらしい。

さて今回は脳細胞の話です。

脳細胞というとニューロン、いわゆる神経細胞のことがまず思い浮かびます。
脳の研究はもっぱらニューロンをターゲットに行われてきました。しかしニューロン以外の脳細胞に近年注目が集まっています。

我々の脳は1000億個以上のニューロンと、その10倍以上ものグリア細胞から成り立っています。主にオリゴデンドロサイト、アストロサイト、ミクログリアの3種類の細胞からなります。
グリアの語源は膠です、脳細胞を膠のように固定しているという意ですね。

脳細胞は生後数か月するともう分裂しなくなりますが、グリア細胞は活発に分裂するので脳腫瘍になるのはもっぱらグリア細胞です。

実際はグリア細胞は、神経細胞の生存や発達機能発現のための脳内環境の維持と代謝的支援を行っています。

オリゴデンドロサイトは神経伝達速度を上げるためニューロンを鞘のように包むミエリン鞘を作ります。ミエリン鞘形成は脳の後ろの方から始まり、20歳くらいになって前頭葉に達し完成します。高度な判断、理性、思考を司る部分が最も最後になり完成するので、それまでの年齢のこどもは情動をコントロールするのが苦手なわけです。

脳内には体内同様の免疫機構がありません。ミクログリアは体内で言う白血球や免疫細胞の働きをして感染、異物処理、老廃物除去などの働きを一手に担っています。

近年注目を集めているのがグリア細胞の中で最も数が多いアストロサイトです。
星のような外見から命名されたアストロサイトは、実は細胞体からスポンジのように複雑な形の突起を伸ばして、脳の空間を満たしています。
アストロサイトの役割は、神経細胞に栄養を与えたり、過剰なイオンや神経伝達物質を速やかに除去することにより、神経細胞の生存と働きを助けています。
脳を有害物質から守る血液脳関門をつくっているのも、アストロサイトです。

発見から100年もの間、アストロサイトをはじめとするグリア細胞は、神経細胞の働きを支える黒衣であると考えられてきました。神経細胞のように、活動電位を発しない、サイレントな細胞だと思われたからです。

しかし近年、アストロサイトがシナプス伝達効率や局所脳血流の制御という,脳機能にとって本質的な役割も果たしていることも明らかになってきました。

睡眠時に脳から有害物質を取り除くのも、アストロサイトの働きだということも分かり始めています。

このようにアストロサイトは,たった一つの細胞で神経の生存環境の維持から神経伝達・脳血流の制御まで行うことができる、驚くほど多機能な細胞です。

脳を支えているこれらグリア細胞の異常が多くの脳疾患の原因であることがわかってきています。

片頭痛は脳血管を囲んでいるアストロサイトの制御の異常により血管が異常に拡張し、三叉神経を介した痛みの原因となります。多発性硬化症という多様な脳細胞が多様なタイミングで壊死していく病気ではオリゴデンドロサイトの異常によりミエリン鞘が失われその部位のニューロンが壊死を起こします。

脳内には細胞だけでなく、細胞間隙というすき間がありこれは加齢により減っていくことが最近分かってきました。

ニューロンはイオンを用いた電気信号とニューロン間にあるシナプスでの化学物質により高速に伝達されます。一方グリア細胞はATP(アデノシン三リン酸)などを分泌して他の細胞と情報のをやり取りしています。

一瞬のひやめきや反射動作などは早いニューロンを介し、そのあとのじっくりとした「いや、待てよ・・・実は」などのゆっくりとした反応にはグリアによる情報伝達が大いに関与していると考えられるようになってきました。

細胞間隙にはグリア細胞から出るさまざまな神経伝達物質が行き来するので、老化によるこの間隙の現象は精神機能減退の一員であろうと考えられています。

脳についてはまだまだ分からないことが残されていますが、わかってきていることも膨大な量と速度で増えています。