戸田の杜クリニック 院長&スタッフブログ

たんぱく質摂取量が決め手だった

栄養学における画期的で新しい知見を得ました。

生物、特に微生物、昆虫などを含む動物は何によって食欲が制御されているのか、という問題についてです。

動物はそこに食物があれば無制限に食べているわけではありません。何かがストップをかけ食欲を司っています。従来の知見では、胃の充満感や血糖値などが候補に挙げられていましたが決定的な反証実験結果が伴っていませんでした。手術して胃のない人でも満腹感は感じるし。

最新の知見ではそれはたんぱく質の摂取量でした。身体が必要とするたんぱく質が満たされるとほぼあらゆる種類の動物で満腹感が得られて食べることを止めているようなのです。

実験的に高たんぱく食の食事を与えられた動物は、はやく満腹となるため結果として低エネルギーの接種となりだんだん痩せていきます。逆に低たんぱく質だと満腹になるまでの摂取量が増えカロリーが増えて太っていくのです。

高たんぱく食で瘦せていくということは人間ではよさそうに思えるのに、他の動物では寿命が短くなることが実験で各種動物間に共通して認められました。高たんぱく食は成長や生殖期間で細胞分裂が盛んな時期に適しているようなのですが、細胞増殖が盛んな時期は遺伝子修復のための休息期間がないことにもなり、長寿遺伝子であるテロメアが短くなりやすいようです。低たんぱく食ではその逆のことが起こります。

さて問題は人間に当てはめた場合のことです。条件を整えた環境で実験すると動物と同じ結果が出て、高蛋白質食では摂取カロリーが減少し、低たんぱく食では増加するのです。

結果として低たんぱく食では長寿遺伝子は活性化されているのに半面カロリー過多のため肥満傾向になっているのです。果たしてこれは総合的に考えていいことなのか悪いことなのか?

当然のことながら人間での肥満は問題です。肥満になると脂肪細胞からインスリン抵抗性を高める各種サイトカインが分泌され、筋肉に貯蔵された蛋白が分解されやすくなるため結果として蛋白要求量が増え、これを補うためさらなる高カロリーが必要になるのです。

特に低たんぱく食でのカロリーを脂肪で補った場合は、糖質で補う以上に身体によくない動脈硬化が進行します。近年話題になっている加工食品に多く含まれるトランス脂肪酸の場合はさらに進行度が増します。先進国の多くではかなり前から、アメリカでも数年前から法的にトランス脂肪酸の添加は法的に禁止されたり表示義務が課されています。日本では表示義務すらないようです。

一般に、総カロリー摂取に占めるたんぱく質の割合は15~20%とされます。ところがアメリカでの研究によると今では12%に減少しているというのです。つまり身体が要求するたんぱく質を摂取するまでその分余計なカロリーを取る必要があるのです。ジャンクフードや加工食品は一見たんぱく質同様のうまみ成分を化学物質で補填しているので低たんぱくでもおいしく感じるわけですが、たんぱく質ではないので必要量を満たすためには結局たくさん食べてしまうようです。ジャンクフードや加工食品は原価をいかに安くするかも勝負になります。人間の食べる量はそうそう増えるわけではないので食品加工会社が成長するというのはそういうことなのです。どっちでもいい商品に一見体にいいといううたい文句をつけて多額の宣伝広告費を使うのも経済効果が上がるからにすぎません。

蛋白摂取量と同時に重要なのが胃の充満感です。食物繊維は胃の充満感を増すため過食を防ぐうえに、腸内細菌を良質に保つことが知られています。良質な腸内細菌叢は便秘などの腸の働きだけでなく、免疫力の維持、精神衛生の保全など多くの役割を担っていることがわかっています。食品を加工すると多くの場合、食物繊維が取り除かれます。早く満腹になっては売れる量が減ってしまうからです。一方、食物繊維の重要性は認識しているので単品で別に製品として商品にすることでさらなる経済効果が生まれるというわけ。

低たんぱく食でかつカロリーオーバーにならないようにすることが究極の答えです。

では、どんな食生活が理想かというとやはりよく言われるように昔の沖縄や地球海沿岸地域の食事ということになります。地産地消できる豆、魚介類、加工品でない肉類を蛋白摂取源とし、新鮮な繊維質の多い野菜(レタスなんかはほとんど繊維質はない)、あまり精製していない雑穀類(玄米とか全粒粉)、エクストラバージンオリーブオイルなどを用い、新鮮な分塩分を控えて調理するのです。当然、材料はオーガニックなものが理想です。やはりここに行きつくのですが、現在ではこの食生活を維持するためには逆に非経済的になってしまうというジレンマが生まれます。経済力による食の安全性への格差が生まれているのは紛れもない事実で、これをどのように解決していくかは資本主義社会の中では非常に難しい。

経済の成長と格差社会の是正、食の安全・健全化をどのように両立させていくかは重要かつ喫緊の地球的課題ではないかと思います。