戸田の杜クリニック 院長&スタッフブログ

慢性的な身体の炎症がうつに影響する

一般診療を掲げている戸田の杜クリニックでもメンタルの問題を抱えている方は少なからず通院しています。

うつ病は今や世界全体で3億人、全人口の4%が罹患しており、その社会的・経済的損失が大きな問題となっています。

うつの原因として脳内のセロトニン濃度の減少がうたわれ、2000年をまたぐ20年間くらいは選択的セロトニン再吸収抑制剤(SSRI;パキシル®など)が一世を風靡しましたが、その効果は限定的であり最近では新製品の開発も頭打ちのようです。

近年の研究では身体の種々の慢性炎症反応があると、サイトカインという炎症惹起物質がマクロファージや他のリンパ球などから分泌され続け、従来通過しないといわれていた脳血液関門(BBB: Brain blood barrier)を通過して脳細胞に影響を与えることが分かってきました。

慢性炎症を引き起こす原因としては慢性関節リウマチ・潰瘍性大腸炎などの自己免疫性疾患、歯周病、内臓肥満(脂肪細胞からサイトカインが出ます)、慢性の睡眠不足、いわゆるストレスなどがあげられます。

BBBを通過したサイトカインは脳内のマクロファージを活性化させ炎症を引き起こし、特に本来脳細胞に栄養を与えたり、廃棄物を掃除したりする働きを持つマイクログリアに働きかけ、攻撃性を助長するようです。そして脳細胞に誤った指令を出し、壊死させたりセロトニン産生を妨げたり、神経細胞同士のシナプス接合(情報伝達)の可塑性を低下させます。

セロトニンは特に影響を受けやすい脳内物質のようで、SSRIにより脳内セロトニン濃度を上昇させると40%くらいに抗うつ作用が著明に認められることの一つの要因でしょう。

慢性炎症でのサイトカインを減少させる方法としては、自己免疫性疾患など原疾患がある場合はそのコントロールをしっかり行うことはもちろんです。歯周病は結構見逃されがちですので定期的なマウスケアは欠かせません。肥満細胞の増加はいわゆるメタボリック症候群ですから有酸素運動や適切な食生活が必要です。睡眠不足も改善する必要があります。

迷走神経(副交感神経を司る脳神経)は自律神経の中で交感神経と反対で休息のための神経です。迷走神経は内臓に降りて腸管運動や消化作用を促したり、脈拍をゆっくりにしたりしますが、脾臓ではマクロファージからの過剰なサイトカイン産生を抑制する働きもしています。リラックスし十分な睡眠をとることで迷走神経(=副交感神経)は活性化されるので日頃の生活習慣が大切なのです。ヨガや迷走なども効果的です。

脳内の慢性炎症を防ぐような抗炎症作用物質は現在研究開発段階ですが遠くない将来に実用化されるでしょう。